コミュニティ学習と開発実践の倫理規定(A Code of Ethics for Community Learning and Development ) 

2022年3月18日

これは、イギリス・スコットランドにおけるCLD Standard Council Scotlandが定めた倫理規定の本研究会による日本語訳です。CLDとは、Community Learning and Development(コミュニティ学習と開発)の略で、ユースワーク、成人学習(adult learning)、地域開発(community development)の実践領域を包含しています。この組織は、スコットランド政府設置(1999年)を機に、現場からの期待を受けて、CLDセクターのワーカーやボランティアを対象とした専門職組織として2008年に設立された、政府から独立した公的団体です。

以下の倫理規定の原文(英語)は、こちら

倫理とは、個人または専門職である構成員の行動を規律する行動基準である。この規定は、何がCLD の仕事かについて定義し伝える上で中心的役割を担う。これとともに定められている、仕事の価値やコンピテンスフレームワークとともに、CLDの仕事の水準を向上させ、専門職としてのCLDのアイデンティティを強化するための基盤を提供する。CLD基準評議会へのメンバー登録の際の基準の1つは、この規定へのコミットメントである。この規定は、倫理原則を定めたものだが、私たちの活動を説明するために、意図的に肯定的な言葉で表現されている。

  1. Primary client 最も大切な相手
    それは、我々がかかわる地域、子ども・若者、成人の学習者である。
  2. Social context 社会的文脈
    我々の仕事は、個々人の中に変化をつくりだすことだけでなく、社会的文脈や環境に変化を押し広げることでもある。
  3. Equity 公正さ
    我々の仕事は、機会の平等を拡大することにある。誰もに開かれた、公正な実践である。
  4. Empowerment エンパワメント
    我々は、関わる人たちが積極的な活動へのキャパシティを広げていくことに関与する。
    その第一歩は、人々が自分の興味関心に目を向け、それに依拠して活動できるようになることにある。
  5. Duty of Care ケアする義務
    自分たちが関わる人たちが、傷つき・傷つけられないよう注意しなければならない。
  6. Corruption 腐敗
    自分たちが関わる人たちの犠牲の上に(食い物にして)、自分や自分たちの組織の利益追求をはかってはならない。
  7. Transparency 透明性
    子ども・若者や地域社会への関わりや、その結果としての関係性は、開かれていて信頼感があるものであること。利害対立の潜在的可能性も明示されていることが必要である。
  8. Confidentiality 秘密の保持
    自分たちが関わった人たちから得た情報は、当事者の意図に反して用いられたり、他者に伝えられてはならない。情報の公表にあたっては、常に、当事者は事前相談を受けられる。
  9. Co-operation 協働
    自分たちが関わる人たちの最善の利益のために、積極的に他者と協働する。
  10. Professional Development 専門職としての成長
    よき仕事をするために必要な情報、資源、スキル、知識を有効に用いるべく、我々は自己をよく振り返りながら(リフレクティブに)働く。
  11. Self-awareness 自己認識
    自分たちの価値観や関心に自覚的で、他者を尊重し、理解して働きかけねばならない。
  12. Boundaries 境界線
    自分たちが関わる相手を守るため、あるいは、仕事の目的を守るために、意図的、専門的に関係性に境界を設けることがある。こうした境界は、明示的に維持される必要がある。個人への関わりは、信頼にもとづきなされ、性的関与があってはならない。
  13. Self-care セルフケア(自己管理)
    仕事は、ワーカーの健康を守るよう保たれる必要がある。

以上

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