プレイグラウンド(Leikkipuistoyksikkö Maunula-Oulunkylä フィンランド ヘルシンキ市)

2024年1月16日
私たちの訪問:2023年9月8日
話をうかがった相手
Hannele UotilaさんTeemu Kariahoさん (主任 Johtava leikkipuisto-ohjaajaさん)

<プレイグラウンドはユースワークではありませんが、ユースワークに参加する年代前の子どもたちの活動として紹介します。以下の内容は、訪問時現在の内容です>

プレイグラウンドは学校の近くに

フィンランドのプレイグラウンドは建物と公園が一体になっているのが特徴。小中学校の近くに設置されており、子どもたちは、自分の学校や家に一番近いプレイグラウンドに通うのが一般的だ。1年に1回登録を行うことで、プレイグラウンドへの参加が可能になる。このマウヌラのプレイグラウンドは、平日の9:00~16:00に開園しており、開園中には4人の職員がいるとのこと。この時間内であれば、誰でも自由に出入りし、沢山の遊具を使って自由に遊ぶことができる。

  • プレイグラウンド
  • プレイグラウンド
午前中は乳幼児の時間

午前中は乳幼児とその保護者を対象に、室内での活動(遊戯、歌を歌う、手芸、童話を読むなど)が行われており、週1回は乳児を対象にした日を設け、絵の具を使ったお絵描きをしたり、音楽を聴いたりとさまざまだ。また週2回は2歳~4歳児を対象にした日を設けて、デイケアという幼稚園・保育園のような場所に通う前の練習として、子どもだけでプレイグラウンドで過ごすようになっている。

午後からは小学生の時間

午後からは小学1~2年生を対象にした学童保育が行われている。特別な支援が必要な子どもの場合など例外もあるが、基本的には2年生までの子どもに限定されていて、3年生以上の子どもはユースセンターに行く。現在、参加している児童は60人もいる。学童保育にもプログラムは用意されているが、子どもたちは友達同士で来ることが多いため、基本的には自由に遊ぶ。小学生にはおやつの時間なるものがあるが、このおやつを食べるためには、軽い運動やお絵描きといったタスクを達成する必要があるそうで、我々もこのおやつを得るために、実際に園庭で体を動かす体験をした。

夏休みの間は、プレイグラウンドを完全開放している。訪れた子どもたちに昼ご飯を提供しており、これはフィンランドで80年近く続く習慣となっている。

16:00以降になると、プレイグラウンドは地域の人々に解放され、子どものお誕生日会といったイベントにも使用される。

  • プレイグラウンド
  • 昼ご飯
ワーカーが大切にしていること

子どもと関わるときだけではなく大人と関わるときも、相手の子育てや色々なことを一緒になって考える姿勢を常に忘れないようにしている。例えば、午前中、小さな子どもを持つ家族とグループワークを行う際、自分たちがなるべく子どもたちの面倒を見て、親たちには横のつながりを持ってもらうことを大事にしているといった具合だ。

見守ること・関わること

何かトラブルが起こった際(子ども同士でけんかになったときなど)には、子どもたちの間に立って、解決の方法を自分たちで学ばせる。でも、子どもたちが自由に遊んでいるときは、見守っているだけのことが多い。学童の年齢の子どもたちは、学校で勉強してきて放課後を楽しんでいるので、友達同士で遊べるよう、特に何もしないことが多い。

大人から何も提供しなくても、子どもたちは子どもたち自身で色々なことを想像しながら遊んでいる。ただ子どもたちが自転車に乗っているように見えても、そこには警察がいて泥棒がいる。子どもたちを見守って、彼らが独創的に楽しめるようにしている。

もしもグループに入れず一人ぼっちになってしまう子がいた場合、大人が声をかけに行くのではなく、気の優しい活発そうな子をつかまえてきて、他の子どもたちから声をかけるようにしている。ワーカーの関わりが実に絶妙だ。

親たちとのかかわり

小さな子は親と一緒に来るので、親と密にコミュニケーションを取ることができるが、小学生の場合は親がプレイグラウンドに来ることはほとんどない。そのため、プレイグラウンドの方から、月1回その子が1カ月どのようにして過ごしていたのかということや、来月の予定などをe-mailで報告するそうだ。また、プレイグラウンドに参加するはずの日に来ていない場合には、その都度、電話で連絡を取っている。

小学生の親は学校に入る前に一度見に来たきり、会わない場合が多いようだ。しかしだからといってつながりが薄いかというと、必ずしもそうではない。この地域で生まれ育った子は、赤ちゃんの頃からプレイグラウンドに通っているため、実はよく見知った両親ばかりなのである。

他機関とのかかわり

プレイグラウンドは、学校、デイケアセンター、産科および小児保健クリニック、ユースセンター、図書館、スポーツサービス、その他ヘルシンキのさまざまな組織など、多くの関係者との協力が行われている。プレイグラウンドのスタッフ自身も、ヘルシンキ市の職員であるため、市内の他機関との協力は簡単でもありスムーズに行える。

子どもを産んだ親たちは、ネウボラという保健所のようなサービスを通してプレイグラウンドの案内を貰い、利用につながる場合が多いそうだ。

施設設備や遊具について

公園内の遊具の設置やその設計、維持については、ヘルシンキ市のプレイグラウンドとは別の部局の仕事である。しかし、自転車やおもちゃといった遊具は、市の入札で選ばれた企業から購入している。プレイグラウンドで使われる遊具は、子どものニーズに合わせて選ばれている。子どもが欲しがるものや、子どもが使うと良いなと思うものを職員が意見を上げて注文するそうだ。遊具は古くなったり壊れたりするので、随時追加している。

ワーカーの働く環境や求められる力量

プレイグラウンドで働く職員は、高校段階での看護学の資格を持つ人と、やはり高校段階での幼児教育に関する教育学の資格を持つ人に分けられる。全体として女性の職員の割合が多いが、男性の職員もいる。職員は市の職員だがプレイグラウンドごとに雇われるため、他に異動することなく、長く同じ施設に勤めることができるそうだ。

夏休みの間、プレイグラウンドは完全解放され、活発に活動するが、今年の夏休みはこの地域に5か所あるプレイグラウンドの内、2か所が閉まっていたため、職員たちは交代で十分休暇を取ることができたとのこと。また、プレイグラウンドは、夏休み中の若者の雇用の場としても活用されている。

プレイグラウンドの職員としての仕事は、対象が赤ちゃんから小学生、そしてその両親まで多岐にわたり、利用者の数も多いという特徴がある。そのため、仕事では、グループを管理する能力、ユーモア、子どもたちとの一貫性のある関係、遊び心、柔軟性、共感、様々なイベントを開催する力量などが求められる。

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